原状回復は
新しい生活を始めるために、賃貸物件を退去する人も多いです。
賃貸物件では、状態によって原状回復の費用が請求されることがあります。原状回復の範囲や費用の負担は、賃貸借契約書に従って決められるものの、状況によって異なる場合が多く、自分の家はどの程度の原状回復の費用が必要になるのだろうと不安に感じることも多いのではないでしょうか?
原状回復の範囲は、貸主から借りている物件全体です。つまり、部屋や設備のすべてというわけです。そのため、壁や床、天井のほかにも、入居時にあった設備はすべて含まれます。
今回は、原状回復の範囲を詳しく紹介し、原状回復にかかる費用を抑えるポイントをわかりやすく紹介します。
考え方
借主は、賃貸契約を交わして、家賃などの費用を払うことで居住しています。しかし、賃貸物件は、あくまでも貸主の持ち物であることに留意しなければならいません。そのために必要なルールが明記されているものが賃貸借契約書です。
借主は賃貸物件を契約した時点で、賃貸借契約書に書かれていることに了承しています。そのため、退去時に原状回復が定められているときには、必要な補修などを行い、退去しなければなりません。つまり、原状回復は、賃貸契約の1つの条件というわけです。
また、ほとんどの賃貸契約では、物件に不具合などが認められたときには、早急に借主や管理会社に連絡する約束が記されています。ほかにも、借主には物件に傷や汚れを付けず、設備を良い状態に保つための対策を怠らない責任があることが明記されています。
ただし、借主の責任に由来しない傷や汚れ、不具合などは原状回復の対象とならず、建物の構造や気象などを理由として防ぎきれなかった不具合については、借主が現状回復の責任を問われません。
天井は
原状回復の範囲や費用の負担を知りたいときは、設備の1箇所ごとに、原状回復の考え方を当てはめていくとわかりやすいです。
ここでは、天井について解説しましょう。
現代のほとんどの暮らしでは、天井に照明を取り付けています。そこで多く起きるのが照明焼けです。特に、天井に直接設置するシーリングライトでは照明焼けがしばしば起こります。
では、天井に起きた照明焼けは、原状回復の対象なのでしょうか。
天井に起きた照明焼けは、場合によって原状回復の対象になります。
しかし照明は日常生活を送るうえで必要不可欠なものであり、借主が照明を付けることは貸主にも十分想定できます。ならば、避けられないものであり、借主の負担による原状回復の対象にならないのではないかと思う人も多いでしょう。
論点
確かに、照明器具を天井に設置することは避けられません。このときのポイントは、どのような照明器具を選び、照明焼けを防ぐ努力を講じたか、また照明焼けが起きることを想定したかです。
どのような照明器具を付けた場合でも、照明焼けが起きるのであれば、借主の負担によって原状回復を行う必要はありません。
しかし、設置した照明器具によって照明焼けが起きることが十分に予想されたにもかかわらず、しかるべき対策を講じなかった場合には原状回復の対象になるというわけです。
つまり、天井に起きた照明焼けが防げたものであるかが論点になります。
入居時の状態
原状回復が発生するときのポイントは、入居時の状態によっても異なります。
原状回復は、すべてを新品の状態にして、貸主に戻すことを指しません。経年劣化を考慮し、入居時の状態に戻す工事のことを指します。
つまり、入居時にすでに天井に劣化が見られたり、照明焼けがあったりしたときには、原状回復の対象にならない場合もあります。また、照明があらかじめ設置されており、設置された照明を日常生活を送るうえで使用して起きた照明焼けは原状回復の対象にならないことが多いです。
ただし、注意しなければならないことは、借主には、物件を良い状態に保つ責任があることです。あらかじめ設置されていたとしても、照明を使い続けることで照明焼けが起きることが明らかであるにもかかわらず、貸主や管理会社に伝えず、また必要な対策を講じなかったことによって、天井に照明焼けが起きたときには、契約内容によって原状回復にかかる費用の一部を請求されることがあります。
費用を抑えたいときは
賃貸物件を退去するときには、引っ越し費用や新しい住まいの初期費用など、出費が重なります。そのため、原状回復にかかる費用は少しでも抑えたいと思うものです。
では、天井の原状回復にかかる費用を少しでも抑える方法はないのでしょうか。
日頃の掃除
原状回復にかかる費用を少しでも抑えたいときには、日頃の掃除をこまめにしておくことがポイントです。汚れを溜めないようにすることで、原状回復にかかる費用を抑えられるのです。
しかし、天井の掃除を日常的に行うのは難しいものがあります。
そのため、天井の汚れが目立ってきたと感じたら、定期的に薄めた中性洗剤などを使って掃除するようにしましょう。ただし、無理に汚れを落とそうとして、かえって天井を傷付けないように注意が必要です。
また、天井の掃除は高所作業になるため、転落や転倒に注意しながら行うようにしましょう。
汚れを落としたら、水分を残さないようにしっかりと乾拭きすることもポイントです。水分が残ったままになっていると、湿気を招き、カビが発生してしまいます。
またどうしても汚れが落ちないときには、ハウスクリーニングに依頼する方法もあります。ただし、ハウスクリーニングに依頼するときは、貸主や管理会社の了承が必要な場合もあるため、あらかじめ確認しておきましょう。
まとめ
原状回復は、範囲や費用が契約内容や状況によって異なることも多く、よくわからないという人も少なくありません。
原状回復の対象となるのは、賃貸借契約で借りているすべてです。しかし、借主が防ぎきれない不具合や、日常生活を送るうえで十分想定できる傷や汚れなどは原状回復の対象になりません。ただし、借主には物件を良い状態に保つ義務があることを忘れないようにしましょう。日頃の掃除を心がけ、丁寧に暮らすことで、原状回復の費用を抑えることに繋がるときもあります。
わからないことがあるときは、入居前に不動産会社に説明を受け、解消しておくこともポイントです。