賃貸物件において入居者が退去するときに、必ずといって良いほど実施するのが、原状回復工事です。
原状回復を行うときには、流れを知っておくと予定を立てやすく便利です。
原状回復の流れに加えて、施工期間の目安、そして注意したいポイントを解説します。
原状回復工事とは
原状回復工事とは、賃貸物件を退去時に入居前の状態に戻す工事のことです。
例えば、生活をしていくなかで床や壁にキズがついてしまったり、浴室のタイルにカビが生じてしまったりすることは多々あります。
こういった劣化を工事によってもとの状態に戻してから、新たな入居者へ貸し出します。
原状回復の施工期間
今までの借主が退去したのち、新たな入居者に速やかに貸し出すためには、このあとに紹介する原状回復の流れだけでなく、施工期間を知っておくと予定が立てやすくなります。
施工期間は、部屋の状態や広さによって異なります。
以下を目安にすると良いでしょう。
【賃貸住宅の場合】
ハウスクリーニング・壁紙張り替えなど:1〜3日
フローリング張り替え・壁の下地交換:1〜2週間
【飲食店】
小規模:1週間程度
大規模:1か月
【オフィス】
3週間以上
状態によっては、上記よりも施工期間が長くなる可能性があります。
また、施工前の現地調査や見積もりなども、数日間の時間を要しますので余裕を持って依頼するのがおすすめです。
原状回復の流れ
原状回復工事はどのような流れで行うか見てみましょう。
状況によっては、次に紹介する流れとは異なる場合もありますが、一般的には以下の流れで行います。
1.退去連絡
入居者から退去の連絡があったら、原状回復工事の業者への手続きを依頼します。
管理会社に物件の管理を委託していれば、管理会社が原状回復工事業者の手配をしてくれますが、そうでない場合はオーナー自身で手配する必要があります。
2.退去立ち会い
入居者が退去するときには、管理会社または物件のオーナーが立ち会って、物件の現状を確認します。
管理会社に物件の管理をまかせている場合でも、オーナーが立ち会うと、物件の状態を確認でき、どのような工事が発生するか把握できるでしょう。
3.現地調査
原状回復工事の業者が、どのような工事が必要になるか調査します。
入居者退去の立ち会い時に、原状回復工事の業者に同席してもらうと、現地調査もできスムーズです。
この際、工事が必要な箇所の写真を撮影しておくと、施工漏れやトラブルを防げます。
また、原状回復工事と合わせてリフォームをしたいときや、コストを抑えたいときなどは、このタイミングで施工業者に相談すると良いでしょう。
4.見積もり・施工期間確認
現地調査の結果をもとに、施工業者業者が見積もりを出します。
業者にもよりますが、現地調査から約3〜5営業日以内には見積書を提示してもらえるでしょう。
5.原状回復工事
見積もり金額に納得できるようであれば、施工業者に原状回復を依頼します。
なお、原状回復工事中は管理会社やオーナーが立ち会う必要はありません。
6.工事完了
工事が終了したら、管理会社またはオーナーが立ち会い、施工箇所をチェックします。
この際、何らかの不備が見られた場合は、修繕や再工事を依頼します。
特に問題がなければ、原状回復工事は完了です。
原状回復工事で注意したいポイント2つ
原状回復工事は、ほとんどの場合はそう難しい工事ではありませんが、注意したい点があります。
一つはスケジュールで、もう一つが原状回復の責任範囲です。
原状回復の流れに加えて、次から紹介する注意すべき点を念頭に置いておけば、退去から新しい入居者の募集までがスムーズに進むでしょう。
1.余裕を持ってスケジュールを組む
入居者の退去日が決まったら、速やかに原状回復工事の手配をすることが大切です。
1日でも早く新たな入居者を見つけて貸し出せれば、その分利益を生み出せます。
よって、入居者がいない期間を短くするために、退去後すぐにでも物件を貸し出したいのではないでしょうか。
よって、原状回復の工事を早めに手配すれば、物件の空き時間を短縮できる可能性があります。
ここで注意したいのが、引越しシーズンの春先には原状回復工事の需要が高まるため、施工業者はスケジュールが埋まりがちです。
工事開始日が後ろ倒しになってしまい、すぐには新しい入居者を募集できないでしょう。
引越しシーズンやその直前に退去者がいる場合は、特にスケジュールにご注意ください。
2.原状回復の責任範囲を明確にしておく
原状回復は、状況によって貸主と借主のどちらかが責任を負います。
この責任範囲を巡って、退去時にトラブルに発展することはめずらしくありません。
よって、
・原状回復の契約書に記載する
・入居時に室内の状態を写真に撮っておく
…などの対策を講じるのが良策です。
なお、原状回復に関する負担については、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に詳しく記載されています。
例えば、日常的に物件の手入れや掃除を行っていても発生してしまうカビや経年による劣化などの原状回復は、貸主が負担します。
一方、掃除が不十分であることによる汚れや劣化、カビなどの原状回復は借主が負担しなければなりません。
これは「善管注意義務」に違反したと見なされるためです。
善管注意義務とは、簡単にいうと「借主は、借りている物件を大切に扱うべきである」という意味。
つまり、善管注意義務の違反とは「借りている物件を大切に扱わなかった」ということになります。
例を挙げると、以下のようなケースが善管注意義務の違反と見なされるでしょう。
・水回りの汚れや結露を放置したことによって生じたカビ
・床などに液体などをこぼし、十分に片付けなかったことによって付着した汚れ
また、雨漏りや水漏れなどの不具合が見られるにもかかわらず、貸主に報告を怠り、その結果、劣化や破損してしまった場合も借主の責任です。
このケースは「報告義務の違反」に該当します。
借主は、借りている物件に何らかの不具合が生じた場合は、借主への報告を義務付けられているためです。
まとめ
原状回復の流れや注意点を把握していれば、予定を立てやすいだけでなく、トラブルを防止できるでしょう。
そのため、素早く次の入居者の募集を始めることも可能です。
物件が空室になる期間を短くでき、利益を上げられるかもしれません。
原状回復の工事を依頼するときには、この記事で紹介した原状回復の流れと注意点を参考にしてみてくださいね。