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賃貸物件のカビ。原状回復の責任を負うのは借主?貸主?それぞれの解説


 

頑張って掃除しても落ちない黒いもの。よく見るとカビだったということはありませんか?
賃貸物件の場合には、退去時に原状回復の修繕費用を負担するのかハラハラするものです。

 

しかし、本当に借主の落ち度と言えるの?と疑問に思ったことはありませんか?そもそもカビは空気中の一定の条件を満たせば増殖し、日本は特に湿気の多い時期にはカビにとって好都合の条件が揃うと言われています。

 

そのようなときには、借主が原状回復の責任を負わない場合も少なくありません。

 

今回は、賃貸物件でカビが生えてしまったときの責任は誰にあるのか、借主と貸主が責任を負う場合のそれぞれのケースについてわかりやすく解説したいと思います。

 

カビが生える条件とは

カビは、一定の条件が揃うと増殖しやすいと言われています。

 

カビが生えやすくなる条件とは、
* 気温が25℃から30℃
* 湿度が70%以上
です。

 

つまり、日本の多くの季節は、カビにとって好条件が続く気温というわけです。さらに梅雨など湿気の多い時期は、気温に加えて湿度も、カビにとって好条件になります。

 

この条件を年間を通して避けることは、日本で暮らす以上、どの地域であっても難しく、日本で暮らす限りはカビが生えるリスクと同居することになると言っても過言ではありません。

 

気象は誰にもコントロールできません。このことで、一定の条件が揃うことを承知していると捉えることもできます。このため、カビが増殖しない責任を借主、貸主の両者が一定に負うことが明白であるといえます。

 

問題となり、トラブルが起きやすい論点は、責任や注意の範囲が両者にどの程度あるかということです。

 

原状回復の考え方をおさらい

では、ここで原状回復の考え方を改めてわかりやすくおさらいしておきましょう。

 

原状回復の考え方は、カビが生えてしまった場合に限らず、
* 借主の責任は、手入れや清掃などの管理を怠り、注意と報告を怠った場合
* 貸主の責任は経年劣化や建物の構造に原因がある場合
と考えておくとケースごとに当てはめて考えやすいです。

 

ここからは、これらを少し詳しく、どのような場合がそれぞれに該当するのかわかりやすく解説したいと思います。

 

借主に責任となるもの

借主が責任を負い、原状回復の費用を負う場合は、手入れや清掃などの管理を怠り、注意と報告を怠った場合と先述しました。

 

これは、
* 善管注意義務
* 報告義務
を怠った場合と言い換えることができます。

 

善管注意義務と報告義務と聞くと、少し難しいように感じ、都度書類のようなものを提出しなければならないのではないかというイメージを持つ人もいるかもしれません。

 

しかしこれらは、賃貸物件で生活するうえで、当たり前の注意と報告の義務でもあるため、難しく考えることはありません。

 

善管注意義務

善管注意義務とは、善良なる管理者として賃貸物件を大切に扱う義務を賃貸借契約を交わすと同時に負うことです。わかりやすくいうと、手入れや清掃などを行い、故意または意図的に賃貸物件に汚れや傷を付けることをしない義務ということです。

 

また、手入れや清掃、注意を怠った過失による汚れや傷の責任を負うことでもあります。
つまり、カビの発生が手入れや清掃を怠ったことによる場合であれば、借主が責任を負わなければなりません。

 

善管注意義務は、賃貸借契約を交わした時点で、借主が賃貸物件に対して負う責任の一つでもあります。

 

報告義務

報告義務とは、賃貸物件に不具合や異常が起きた場合、また不具合や異常が予期できた場合、貸主に対して報告する義務を負うということです。

 

例えば、水道の蛇口のパッキンが劣化によってひび割れ、水漏れが起きた場合、放置したり、勝手に修理するのではなく、管理会社や貸主に報告することや、水漏れが予期できる状態を発見した場合、報告する義務を負うということです。

 

報告義務を怠ったことで、経年劣化のすべての責任を借主が負うことはまれですが、本来報告義務を怠っていなければ問われることのない責任を問われることは多くあります。

 

貸主に責任があるもの

貸主に原状回復の責任があるものは、経年劣化や建物の構造に原因がある場合と先述しました。つまり、経年劣化や、建物の構造上、温度や湿気を逃すことができず、カビが生えた場合には貸主が原状回復の費用を負うということです。

 

* 結露が起きやすい窓
* 換気をしにくい構造
* 水はけや日当たりの悪さ
は、借主がどのような手入れや清掃を行っても、カビが生える原因を回避できないものとされ、建物の構造に問題があるため貸主が責任を負うということです。

 

例外も

しかし、一般的な原状回復の考え方では、貸主の責任となる場合でも、賃貸借契約書に特記事項があり、特記事項を重要事項説明書において説明され、署名捺印し了承している場合には、建物の構造上の問題であっても、貸主が原状回復の責任を負う場合があります。

 

貸主には、賃貸借契約書を交わすときに、自由に特記事項を設定する権利があり、賃貸借契約書と重要事項説明書に署名捺印しているということは特記事項を了承したということです。

 

例えば、「いかなる原因におけるカビの発生も借主が責任を負う」という特記事項が設けられている場合には、どのような原因があっても退去時には、借主が原状回復の費用を負担しなければなりません。

 

このため、契約書がどのような内容であるかをきちんと確認したうえで契約することが大切です。

 

まとめ

今回は、賃貸物件でカビが生えたときの原状回復の責任を誰が負うのかということについて、解説しました。

 

賃貸借契約書を交わした時点で、借主は、
* 善管注意義務
* 報告義務
を負います。

 

つまり、手入れや清掃を怠ることなく、善良に管理する責任と、何らかの不具合や異常が感じられた場合、またそれを予期した場合には、報告する義務を負うということです。

 

経年劣化や構造上の問題でカビが生えた場合には、借主が原状回復の責任を負い、費用を負うことはありません。ただし、賃貸借契約書の内容を把握しておくことも大切です。

 

カビは、気温が25度から30度、湿度が70以上という条件が揃えば増殖し、日本の気候は好都合でもあります。しかし借主には、手入れや清掃の責任があり、カビの増殖が著しい場合などには管理会社や貸主に報告する義務があります。

 

掃除や換気をしているけれど、カビの発生を防げない場合などには、管理会社や貸主に報告し、早めに相談するようにしましょう。

 

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